BL 短編
□寂しさと嫉妬
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フランは人通りの少ない通路の端で誰かと通信していた。
『フランですか?』
「師匠〜あんまり電話しないで下さいって言ったでしょー?」
フランはもうっと言う風に言えば、フランの師匠であるボンゴレの霧の守護者、六道骸が『クフフ』と笑う。
「笑い事じゃないんですよー?師匠が誰かってヴァリアー側は誰一人知らないんですからー」
『クハハッ、そうでしたか。いやぁ、フランがどうしているか気になりましてね』
「どうしているかって…二日に一回掛けてきてる癖に」
ムスッとした声色で言うと骸はまた笑う。その後にこう続けた。
『僕はフラン、お前が心配で堪らないんですよ。滅多に感情を表さないお前がちゃんとやっているのか…心配なんですよ』
フランは骸の言葉にドキッとする。本当に心配している声。
でも、まだまだ自分は子供扱いされているんだという苛立ち。
自分の事を思ってくれるのは嬉しいけど、子供扱いは要らない。
「師匠…子供扱いはもういいですよー」
『いや、お前はまだまだ子供ですよ』
ムカッとするフラン。
何か言い返そうと口を開いた時…。
『骸さ〜ん、誰と話してるんれすか?』
浮かれた動物の声が聞こえた。
『フランとですよ。犬、ちょっと静かになさい』
『フラン!?骸さん、オレにも代わってくらさいっ!』
電話越しにも骸と犬が電話を取り合っている姿が解る。
ハァ…とフランが溜め息を吐く。
電話の向こうでは骸と犬がギャーギャー言っている。
修行していた時代にもこういう事があったな、とフランは思い出し、クスクスと笑う。
「犬ニーサンは何時も元気ですねー」
『ちょっと、骸ちゃん、犬っ!
何してるのよ!』
あ、M・Mだ。
相変わらず、師匠の事は『骸ちゃん』なんですねー。
『オレにも貸してくらさいよ!』
『今、僕が話してたんですよ!』
フランは苦笑い気味に溜め息を吐く。
―…ガキの喧嘩かよ。
『んもうっ、私に貸して!』
M・Mが骸の手から携帯を奪う。
すると、骸と犬から不服そうな声。
傍らに居た千種は呆れていた。
『もしもし?フラン?』
「あーM・M…ネーサン」
『…今、一瞬私の事呼び捨てにしたでしょ?』
「ま、まさかー」
危ない、危ない。
この女(ヒト)はキレると煩いんですよねー。
『…まぁいいけど?
それより、あんたちゃんと食べてる?あんたって細っこいから激しく動くと倒れるからねー。ちゃんとやっていけてる?』
「うるさーい、M・Mネーサン。
ミーはちゃんと食べてるし、やっていけてますから、一々言わなくたって大丈夫ですよー」
『そう?ならいっかー』
全く、師匠やM・Mネーサン達は過保護なんだから…。
ミーはそんなに子供じゃないのに。
「……フラン?」
「!!」
フランは不意に聞こえた声に振り返る。其処に居たのは…ベルフェゴールだった。
ベルセンパイ!?
ヤッバ…!
フランは声を潜めて切りますねーと告げると、電話を切った。
素早く携帯をポケットに入れ、ベルの方を向く。
「…誰と電話してたわけ?」
「ちょっと知り合いとですよー」
「こんな人気の無い所で?」
何だ?
ベルセンパイが不機嫌そうな声色してる…?
「……何処で電話しようがミーの自由でしょ?」
「ししっ、違げーだろ?聞かれたくないから、こんな所でコソコソと電話してんだろ」
その言葉にフランはギクッとする。
ベルには鋭い所がある。一番ベルには勘づかれたくなかった。
「……否定しないっつー事は図星?」
「…っ、う、煩いですねー。
ミーがどうこうしようが、それはベルセンパイには関係無い事でしょ!?」
強気な口調でそう言うと、ベルは悲しそうな表情(カオ)をした。
フランはそれを見て、『えっ!?』と驚く。
「…悪ィ、オレには関係無い事だよな…」
覇気の無い声でベルはそう言う。最後に、『もう冷えるから早く戻れよ』と、ベルセンパイらしくない気遣いの言葉を言って、センパイは其処から去って行く。
「……ベルセンパイ?」
訝しげに呟くと、ポケットの中で携帯が振動していたので、取り出す。液晶画面を見ると、『師匠』という文字。
「全く…」
呆れ気味に笑い通話ボタンを押した。
楽しそうに誰かと話すフランを遠くから眺めるベル。
その表情は悲しげで…。
「…オレはお前が誰と話してるか判ってるんだぜ…?
……フラン、いい加減オレの想いに気付けよ…」
寂しそうにそう呟いて、フランから離れていった。
END