BOOK 3

□第一章
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「…ん、燐!!」

「はっ!!」

「燐、雪ちゃん来ちゃうよ?」

「あ、あぁ。なんだ、しえみか…」

「?」


美零…。












夏祭りの夜。

気を失ってから、俺と雪男は病院に運ばれた。

目が覚めた時、当然俺たちは神父に怒られた。


それと、不思議なことに…


美零のことを、みんな“覚えていなかった”。


美零の話をすればするほど、周りのみんなは俺を好奇の目で見た。


美零は、存在しなかった。


時が経ち、俺は心の隅で、そう解釈してしまっていた。













ガチャ

「はーい、静かに。授業を始めます」

「あ、雪ちゃんだ」


「…と、その前に、新しい塾生を紹介します」



扉が開いたと同時に、俺は驚愕した。





「…美零…?」





「新しい塾生の咲本美零さんです」


「咲本美零です。よ、よろしくお願いします」


「咲本さん。空いてる席に座ってください」

「はい」

そういうと美零は、俺の隣を“平然と”通り過ぎて行った。


「お、おい!」


俺は無意識に美零の腕をつかんでいた。


「あ、あの…」


美零は、まるで他人のように俺を見ていた。

「俺だよ。わかんねえのか?」


「奥村君!席につきなさい。咲本さん、すいません」


雪男が、切り裂きように言葉を発した。

その瞬間、美零はそそくさと後ろの席についてしまった。


「燐…どうしたの?」

「…別に。何でもねえよ」




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