BOOK 3

□第二章
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―廃墟の倉庫―


廃墟と化した倉庫。

そこには、ベットとテーブルなどの生活に必要な最低限のものが置かれていた。


そして、薄暗い中、二人の女性がいた。


「あの男誰や?」

「…奥村雪男先生。ここまで、運んできてくれたんです」

「あては男と付きあわせるために、祓魔塾に行くのを許したんやないで?」

「そ、そんなこと!! ゲホッ、ゲホコホッ」

「冗談や、冗談」

「もう…。やめてくださいよ。弥恵さん」


「…今日、炎出したんか」


「! …ごめんなさい」

「…まぁ、今回は許したる。明日も塾あるんやろ? はよ寝な」

「はぁ…。おやすみなさい」

「おやすみ」

少し経ったあと、すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえてきた。

美零が寝たと確信してから、

「…ほな、行ってくるな」

と、弥恵と呼ばれる女性は、美零に小さな声で語りかけ、倉庫から出た。
























ヒュオオオ…。

風が吹き抜ける鉄塔の上。

「遅くなりき。待ちしや?」

「これはこれは、久しぶりにお会いしますねぇ。天照大神」


鉄塔の上に、メフィスト・フェレスと天照大神がそろった。


「これまた随分と変はりし格好じゃな」

「あなたが眠っている間に、時は過ぎたんですよ。あなたが居ないと時が進まなかった昔と違ってね」

「…そうじゃな」

「それより、どうです? あなたの契約者は」

「良き子じゃ。なるが契約せし時は小さかりしかば、私のことは母親とでも思ってゐるならむ」

「…そうそう、今日は私の弟が迷惑をかけたらしい。あなたの契約者に炎を使わせてしまった」

「何じゃと? 影響を受けやすいとわかりておきながら、わざわざ我の契約者を危険にさらしきと申すや!?」

天照大神は、黒髪をなびかせながら、鋭い目つきでメフィストを睨んだ。そして、はっと我に返った後、咳払いをしてから言い放った。


「お主、何か企んでいるのならじな?」


「フフフ…。どうでしょうねぇ」

「…我の契約者に何かしせば許さざればな」

天照大神は、そう言い残して、ひらりと鉄塔から飛び降りた。天女が空を舞うように、羽衣が風になびいていた。



「企んでいる、か…。そろそろほったらかしにしていた箱を、開ける時が来たようですね…」
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